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<幕の内外>女形の指の動き 色気を出すひと工夫

2009年9月19日

 女形の美しさをつくる重要な要素のひとつが「手」。美しく見える基本条件は「よくしなる」ことと「小さく可憐(かれん)」なこと。

 しなやかに反りかえって情感を伝える手。女形は若いうちから、指先をしならせる訓練をしますが、もともとが男なので「小さく見せる」ための工夫が必要です。

 たとえば指をさすポーズ。名女形・六代目尾上梅幸は、芸談集「梅の下風」のなかで「中指、薬指、小指を、手の中にできるだけ握りこむようにして小さく見せ、人さし指の先に力を入れて、ピンと反らすようにキューッと指す」と書いています。こうすると小さく形良く見えますが、実際にやってみると、指先だけでも結構な力が必要。

 お姫様やお嬢様は、袖口から手をあまり出さないのがお約束で、ここでもひと工夫。着物よりも襦袢(じゅばん)を少し長めに仕立て、そのはしに親指をからませて、手が露出しないように小さく見せます。泣く時は袖口に指先を入れたまま、まっすぐピンと反らせて泣くとかわいく見えますが、普通に内側に折ってしまうと、色気がありません。

 梅幸は人さし指一本で、年齢を演じ分ける方法も紹介しています。イラストを見てください。「わたし」と自分の顔を指す時の、娘、年増(女盛り)、おばあさんの違いです。娘は指の背で、年増は指の横で指しますが、こうすると自然と色気が出るから不思議。

 道行の場面で杖(つえ)を持つ時も、若い女性は指をそろえて持ちますが、おばあさんになると、親指で杖の頭を押さえるようにして握るなどの工夫があります。

 「指先まで気を抜かない」ことで女形の美はつくられています。 (イラストレーター・辻和子)

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<歌舞伎>原案・染五郎、演出・幸四郎で『京乱噂鉤爪』 新作へ熱い情熱注ぐ

2009年9月19日 東京

 江戸川乱歩の「人間豹(ひょう)」を原作とした新作歌舞伎が好評を博したことから、その続編「京乱噂(きょうをみだすうわさの)鉤爪(かぎづめ)」が来月四日から、東京・国立大劇場で始まる。主演の松本幸四郎、市川染五郎父子らが新作歌舞伎への熱い思いを語った。 (藤英樹)

 今回は乱歩の原作はなく、原案を染五郎が担当、演出は前回に続き幸四郎(九代琴松)。染五郎の人間豹(殺人鬼)が、京を舞台に幸四郎の明智小五郎に追い詰められついに最期を迎えるのが見どころだ。新たに、天下転覆を狙う陰陽師(中村梅玉)も絡む。 

 「最初は乱歩作品が歌舞伎になるとは思わなかった」と言う幸四郎。ところが「いざやってみると、乱歩作品の持つシュール(レアリスム=非日常性)と悪(ピカレスク)が実はすごく歌舞伎的で、面白い結果が出た」と、昨年十一月に同劇場で上演された第一作「江戸(えどの)宵闇妖(やみあやしの)鉤爪(かぎづめ)」の成功に満足そう。

 同劇場によると、ふだん歌舞伎を見ないような若い観客が公演後半になるにつれ増えたという。すぐに続編の話が浮上。最初に「乱歩作品を歌舞伎にしてみたい」と言い出した染五郎が原案にとりかかった。「舞台の合間に近くの喫茶店でパソコンを開いて原案を練った」と染五郎。前作で大谷竹次郎賞奨励賞を受賞した岩豪友樹子が脚本にまとめた。

 幸四郎は「新作歌舞伎というと昔から評価が低いが、実は歌舞伎にとってとても大事なもの」と強調する。「新作を生み出し、演じるのは至難の業。続編となれば奇跡に近い。でも取り組むことは歌舞伎俳優に大きな力を与えてくれる。私たちのそういう情熱を評価していただきたい」

 梅玉は「前作の評判を聞いて、ぜひ参加したいと思っていた」と言う。演じる陰陽師は人間豹を操る悪の権化ともいえる存在。「乱歩作品らしく怪しい雰囲気を出し、思い切り憎たらしく演じたい」と意気込む。

 幸四郎、染五郎父子が舞台でがっぷり四つで対決する展開も楽しみだ。幸四郎は「ありがたい半面、俳優として(染五郎は)脅威。老骨にむち打って負けないように頑張らないと」と笑わせる。

 一方、染五郎は「自分が考えたものが形になり、同時に思ってもみなかった方向にいく面白さを知った」と新作に味をしめた様子。「乱歩は今回で最後だが、ほかにも文学作品で新作歌舞伎にできそうなものがあると思う。ああいう歌舞伎、こういう歌舞伎があっていい」とさまざまな可能性を思案する。

 幸四郎は「乱歩歌舞伎の舞台の幕末と、現代は乱世という点で似ていると思う。だから現代への問題提起も含んでいる」と語る。そしてこうも力説した。「歌舞伎は伝統芸能であると同時に演劇。私たちの父や祖父たちが心理描写やリアリズムをつけ加えて歌舞伎を演劇として面白くしてきた。私たちもそういう努力を引き継がなければいけない。演劇としての歌舞伎をより発展させていきたい。新作歌舞伎をやる意義はそこにあるんです」

 十月二十七日まで。1万2千~千5百円。(電)0570・07・9900。

歌舞伎:九月大歌舞伎(歌舞伎座) 変化をきかせる吉右衛門の光秀


 昼の最初が「竜馬がゆく 最後の一日」(司馬遼太郎作・演出、齋藤雅文脚本・演出)。3部作の最後。竜馬(染五郎)が暗殺される一日に、その人生を凝縮させて描く。染五郎、松緑、芝のぶ、男女蔵が好演。

 続く「桔梗旗揚(ききょうのはたあげ)」は「饗応」から「連歌」まで。「馬盥(ばだらい)」の怒りを抑えた花道の入り、「連歌」での上使を切り、三方を踏み砕いて本心を現すすごみなど、吉右衛門の光秀が変化をきかせる。富十郎の春永、芝雀の桔梗、魁春の皐月。

 「お祭り」は芝翫の芸者。歌昇、染五郎、松緑らの鳶頭(とびがしら)、芝雀、孝太郎の手古舞と、華やかでゆったりとした世界を展開する。

 最後が「河内山」。権力に屈せず、したたかな河内山を、幸四郎が緩急をつけて見せる。梅玉の松江侯が短気さをうまく出した。

 夜が「比翼稲妻」から染五郎の名古屋、松緑の不破、芝雀の留女による「鞘当(さやあて)」と「鈴ケ森」。梅玉の権八が柔らかさの底に強さのある美しい若衆ぶり。吉右衛門の長兵衛に胆力と情が出た。

 「勧進帳」は幸四郎の弁慶、吉右衛門の富樫、染五郎の義経。弁慶と富樫の問答に緊迫感が出た。「滝流し」まで力のこもった弁慶である。富樫からは義経主従を逃がす覚悟が強く感じられた。義経に品位がある。

 最後が「松竹梅湯島掛額」。吉右衛門の長兵衛が理屈抜きの喜劇を闊達(かったつ)に演じる。福助が「櫓(やぐら)のお七」で鮮やかな人形ぶりを見せる。26日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2009年9月17日 東京夕刊

歌舞伎舞踊:「山帰り」地元で初演--伊勢原・大山 /神奈川

毎日

 伊勢原市大山の大山阿夫利(あふり)神社能楽殿で、歌舞伎俳優、十代目坂東三津五郎さんによる歌舞伎舞踊「山帰り」、林家正蔵さんによる古典落語「大山詣(まい)り」などの公演「山帰り奉納」(奉納実行委員会主催)が16日始まった。17日まで。

 三津五郎さんや正蔵さん、神社の目黒仁宮司らによる「大山詣で」をテーマにした座談会、正蔵さんの落語に続き、三津五郎さんが演舞。「大和屋!」の掛け声が飛ぶ中、職人風のはんてん姿に納め太刀、梵天(ぼんてん)を持ち、江戸っ子の洒脱(しゃだつ)、軽さを表現した粋な踊りに、詰めかけた約1000人は見入った。

 大山を舞台にした「山帰り」が地元で演じられるのは三代目三津五郎が1823(文政6)年に初演以来初めて。参詣した鳶(とび)職人が帰りの道中でばくちに負けるなどし、自らの間抜けぶりをあざける粗筋で、江戸庶民の生活や風俗、気質がしのばれる。【田中義宏】

悲願の『山帰り』 伊勢原大山の阿夫利神社


2009年9月17日東京

大山参詣にちなんだ「山帰り」を披露する坂東三津五郎さん=伊勢原市で


 歌舞伎俳優の十代目坂東三津五郎さん(53)が十六日夕、伊勢原市大山の阿夫利神社能楽殿で、江戸時代の大山参詣を題材にした歌舞伎舞踊「山帰り」を奉納上演した。

 山帰りは江戸っ子の粋な姿をユーモラスに表現。江戸時代の三代目三津五郎の初演以来、お家芸として継承されている。

 大山での奉納上演について三津五郎さんは「長年の悲願がかなってうれしい」。存分に舞い、約千人の観客を大いに楽しませた。

 ほかに、落語家林家正蔵さんが当地にちなみ古典落語「大山詣(まい)り」も披露。上演は十七日もあり、午後四時開演。 (藤浪繁雄)

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記事一覧

文楽、巧みな人形遣い 東京・国立劇場で上演「天変斯止嵐后晴」=YJP(933文字)(読売新聞) - 2009年9月

伝統の「安乗文楽」熱演 志摩の児童・生徒と保存会員=三重(339文字)(読売新聞) - 2009年9月

文楽:九月文楽公演(国立小劇場) 文楽の特色生かした「天変斯止」(648文字)(毎日新聞) - 2009年9月

[評]九月文楽公演 「沼津」綱大夫、技の粋 富岡泰(寄稿)(781文字)(読売新聞) - 2009年9月

[点描・文楽の素顔]三人遣い 呼吸合わせ、感情リアルに(687文字)(読売新聞) - 2009年9月

文楽がよくわかる:「鬼一法眼三略巻」 三段目「菊畑」(829文字)(毎日新聞) - 2009年9月

上方芸術祭寄席:10月に国立文楽劇場で開催(211文字)(毎日新聞) - 2009年8月

文楽がよくわかる:「化競丑満鐘」 中之巻 箱根先化住居(896文字)(毎日新聞) - 2009年8月

日高川で10月、文楽公演と教室=和歌山(235文字)(読売新聞) - 2009年8月

記者が選ぶ今週はコレ!・シアター:文楽「天変斯止嵐后晴」(452文字)(毎日新聞) - 2009年8月

人間国宝 鶴沢清治 「テンペスト」翻案の文楽 妖術の嵐、弦楽器で表現(1004文字)(読売新聞) - 2009年8月

[点描・文楽の素顔]御簾内 お囃子、出過ぎず繊細に(584文字)(読売新聞) - 2009年8月

戦時下の文楽 写真600枚見つかる 空襲で焼失、舞台の様子/奈良・天理(685文字)(読売新聞) - 2009年8月

文楽がよくわかる:「生写朝顔話」 四段目「宿屋」(924文字)(毎日新聞) - 2009年8月

憂楽帳:文楽応援団(458文字)(毎日新聞) - 2009年8月

橋下知事、文楽に注文 府文化振興会議で=大阪(337文字)(読売新聞) - 2009年8月

[評]夏休み文楽特別公演「天変斯止嵐后晴」 幻想世界、引き込む冒頭(678文字)(読売新聞) - 2009年8月

【ステージ】夏休み文楽特別公演 国立文楽劇場 シェークスピア作品を大胆翻案(874文字)(産経新聞) - 2009年8月

文楽がよくわかる:「生写朝顔話」(890文字)(毎日新聞) - 2009年7月

[点描・文楽の素顔]異形の人形たち 驚き、爆笑しよう(687文字)(

文楽:九月文楽公演(国立小劇場) 文楽の特色生かした「天変斯止」


 3部制で1部は時代物の「鬼一法眼」。「書写山」は津駒が乳母飛鳥の情愛を表現し、寛治の三味線がさえた。「清盛館」は掛け合い。「菊畑」は咲・燕三で人物と情景の語り分けに実力を発揮した。最後は「五條橋」。人形は鬼一が玉女、虎蔵実は牛若丸が和生、皆鶴姫が清十郎、弁慶が玉也、智恵内が文司とそろう。

 2部は世話物の人気曲が二つ。「沼津」は前半が綱・清二郎。後半は住・錦糸で、敵対する立場に立った親子の義理と人情の相克を巧みに語り出した。簑助の十兵衛、勘十郎の平作、紋寿のお米と人形もベスト。

 「酒屋」は嶋・清友で、不肖の子を持った親たちの苦悩を表現し、文雀が一途(いちず)に夫を慕うお園のいじらしさを美しく描いた。玉女の宗岸、玉輝の半兵衛、勘寿の女房と周りもそろった。

 3部はシェークスピアの「テンペスト」を翻案した山田庄一脚本・演出、清治作曲の新作「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)」。舞台を中世の日本に移し、謀略によって孤島へ流された大名が妖術を使って敵に復讐(ふくしゅう)する様子と若い男女の恋を、原作を生かしながら文楽の技法を使ってファンタスティックに描いた脚本・演出が優れる。

 太棹(ふとざお)と3種の琴を駆使して作品世界を音で表現した清治の作曲も見事で、千歳、文字久、呂勢、咲甫ら中堅若手の大夫が、清治、清介、宗助らベテランの三味線のリードで変化に富んだ物語を描き、人形も玉女、勘十郎、和生、簑二郎、文司らが活躍。三業協力で文楽の特色を生かした新作が生まれた。23日まで。(水落潔)

勘太郎、七之助と兄弟公演「芯」


踊りと音「和」感じて
 歌舞伎の中村勘太郎、七之助兄弟が太鼓や三味線と競演する舞台「錦秋特別公演 芯」が、来月17日午後1時と同5時半から、東京・五反田のゆうぽうとで行われる。昨年度の読売演劇大賞で杉村春子賞に輝き、2012年に六代目勘九郎を襲名するなど、活躍の続く勘太郎に聞いた。(多葉田聡)

 勘太郎と七之助は「地方のファンにも歌舞伎を見てほしい」と、05年から毎年、兄弟で全国を回る公演を続けてきた。5年目の今年は太鼓の林英哲、津軽三味線の高橋竹童が新たに加わり、それぞれの演奏を披露するほか、「芯」と題した競演も繰り広げる(演出・振り付けは藤間勘十郎)。

 勘太郎は「踊りと三味線、太鼓を組み合わせ、これまで見たことのないものを作りたい。僕らは踊るだけでなく、所作台を踏み鳴らしたり鈴を鳴らしたりして、音のコラボレーションを目指す」と狙いを語る。

 若い歌舞伎ファンが増えつつあるが、同世代にもっと和の世界に触れてほしいと願う。

 「海外に行って日本のことを尋ねられても、答えられない人が多い。今回の公演で、歌舞伎や太鼓、三味線といった日本の伝統を一度に見て、感じてほしい」

 昨年は「仮名手本忠臣蔵」で8役を演じ分け、杉村春子賞を受賞。今年も1月の浅草歌舞伎に始まり、大阪・松竹座、香川・こんぴら歌舞伎、京都・南座、博多座、歌舞伎座、今月の名古屋・平成中村座と、休む間もない活躍が続く。「一本刀土俵入」や「土蜘」、「伊賀越道中双六」の「沼津」など大役への挑戦も相次ぐ。

 「『一本刀』のような芝居は初めてだったし、20歳代で『沼津』の呉服屋十兵衛を演じるのは本当に大変だった。これだけ大きな役をやらせていただけることへの感謝を忘れず、一つ一つ吸収していきたい」

 女優、前田愛との結婚を来月に控え、3年後には父、勘三郎が名乗っていた勘九郎を襲名することも発表された。27歳。大きな飛躍の時を迎えたが、力みや気負いは一切感じられない。

 「勝負時なのは、いつものこと。今を一生懸命生きるしかない」

 若い才能がひしめき合う歌舞伎界でも同世代のライバルを意識することなく、自分の足元を見つめる。

 「歌舞伎は順位を争うスポーツじゃない。みんなでバランスを取り、面白い作品をお見せすることが大事」

 「錦秋特別公演」は10月8日に東京・町田市民ホール、14日に千葉・君津市民文化ホールでも行われる。(電)03・3583・6766。

(2009年9月14日 読売新聞)

16日から歌舞伎モナコ公演

2009.9.13 08:03 産経
歌舞伎のモナコ公演に参加する市川海老蔵、市川團十郎、中村時蔵(左から)=31日、東京・丸の内の東京會舘 

地中海に面したモナコのモンテカルロ歌劇場で16日から、市川團十郎、中村時蔵、市川海老蔵らの出演で歌舞伎公演が行われる。モナコでの歌舞伎公演は初めて。團十郎、時蔵が「鳴神(なるかみ)」、海老蔵が「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」と、市川家にゆかりの深い演目が上演される。

 世界無形遺産に選ばれた歌舞伎はこのところ、積極的に海外公演を行っている。團十郎と海老蔵も、平成16年にパリ・国立シャイヨー劇場、19年にパリ・オペラ座で上演している。

 「2年ちょっと前にモナコのアルベール大公が来日されたとき、会食にご招待を受けて、モナコのオペラ劇場でも歌舞伎ができないかと言われました。ありがたいお話で、歌舞伎が認知してもらえるいい機会になると思う」と團十郎。

 モンテカルロ歌劇場は、パリ・オペラ座の設計者、シャルル・ガルニエの手になる建物で、1879年に完成した。座席数は467席と小さいため、花道は設けずに「鳴神」などを上演するという。19日まで4公演を行う予定。

<幕の内外>衣装方の奮闘 『三つの大変』乗り越え

2009年9月12日


 歌舞伎の衣装方には「三つの大変」がつきものです。

 「探すのが大変」「作るのが大変」「役者さんに正しく色のニュアンスを伝えるのが大変」。さらに最近では興行形態の「スパンの短さ」が加わって、現場は常に戦場状態です。

 まずは探す大変さ。着物には染めた糸で模様を織り出す「織り」と、後から布に模様を染める「染め」があります。織りにも、時代物で貴人が着るような豪華なものと、紬(つむぎ)のような日常着があり、豪華なものは、現代でも新しく作ることができますが、世話物で使う庶民向けのものが、手に入りにくくなっているのです。

 たとえば黄八丈。テレビの時代劇でもおなじみの、町娘が着ている黄色い格子柄。歌舞伎では「髪結新三」に登場するお嬢さま・お熊のトレードマーク。

 東京都の八丈島の伝統工芸品で、輝くような黄色は、島に自生する植物で糸染めされますが、社会環境の変化で、原料も織り手も少なくなった現代では貴重品。今ではお熊の衣装は、黄八丈風に布を染めたものが主流ですが、すでに昭和初期に、名女形・六代目尾上梅幸が、自らの芸談集の中で「なかなか見つからなくなった」と書いています。

 それでも、どうしても織物でなければならない場合もあるため、衣装方が直接、地方の織元をたずねて布地を特注することも。色に関しては役者さんの考えがあり、製作段階で確認をしてもらわねばなりませんが、小さな染め見本と出来上がったものでは、色の見え方も違う。二十回以上チェックを重ねて、初日に間に合った例もあるほどで、舞台もびっくりのスリリングさです。

 (イラストレーター・辻和子)

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<歌舞伎>9月大歌舞伎 矢代條介、亀井六郎の二役 大谷友右衛門 脇でもキラリ 二枚目の立役

2009年9月12日 東京

 大きな役でなく出番も少ないが、妙に気になる俳優がいる。「端正な容姿、おっとりとした物腰」でファンから支持される二枚目の立役、大谷友右衛門。現在の歌舞伎界ただ一人の文化勲章受章者・真女形の中村雀右衛門の長男。実弟が売り出し中の女形・中村芝雀。目立たないようだが、梨園(りえん)のエリートでもある。大谷廣太郎・廣松の高校生兄弟も舞台に送り出している二人の息子の父は六十歳の還暦を迎え、気力充実-。 (富沢慶秀)

 東京・歌舞伎座の九月大歌舞伎で昼の部「時今也(ときはいま)桔梗旗揚(ききょうのはたあげ)」矢代條介、夜の部「勧進帳」亀井六郎の二役に出演中だ。

 明智光秀が主君の織田信長を本能寺に討つまでを、武智光秀、小田春永と名前を変えて描いた通称「馬盥(たらい)の光秀」の「時今也~」。

 二幕目「本能寺馬盥の場」。「お召しでござるぞ」と、謹慎の解けた中村吉右衛門の光秀を本能寺に迎える春永の家臣、キリッとした姿が印象的な矢代條介役。芝雀も光秀の妹・桔梗役で出ているが「私も若いころ桔梗をやりました」。

 立役専門の友右衛門のようだが「いまでもお役がくれば女形もやります」。父のような「娘役は無理でも、年相応の眉(まみえ)なしのような役なら…」という。

 しかし「やはり胸の上まできっちり帯で締めつけられる女形より、胸を張って演技ができる立役の方が楽しい」と笑う。柔らかな二枚目だが、ご本人は「敵役も面白い」。

 松本幸四郎が弁慶を演じている「勧進帳」。四天王の一人、亀井六郎役。十二歳のとき、大谷廣太郎を名乗って初舞台を踏んだのが歌舞伎座「勧進帳」の太刀持ち役だった。当時はまだ前名だが、松本白鸚(弁慶)、先代市川團十郎(富樫)や尾上梅幸(義経)、二世尾上松緑が後見という舞台。

 「すごい伯父や先輩たちと一緒だった」と、忘れられない舞台だっただけに、今回も気合が入る。その三年後に八代目友右衛門を襲名。大谷の方の屋号は明石屋。父親と芝雀は京屋。

 父親も若いころ、映画「佐々木小次郎」の小次郎役を演じた美男子ぶりが知られている。友右衛門も目鼻立ちの整った爽(さわ)やかな好男子ながら「私は母親似で、弟のほうが父親似のようです」。一九八五年、NHK大河ドラマ「春の波濤(はとう)」やNHK時代劇「真田太平記」などでもお茶の間の人気となった。

 その母親は、四十九歳の若さで世を去った先々代の七世松本幸四郎の娘。七世は、戦争から帰った立役の七世大谷友右衛門を女形の雀右衛門に転向させた大御所。

 八十九歳になった雀右衛門、さすがに舞台は間遠になった。「一日おきに父親の家に通っています」と長男。「いまの劇場が取り壊しになる来年四月までに一度、歌舞伎座の舞台に立たせたい」

【ふるさと便り】徳島でシスティーナ歌舞伎

2009.9.9 20:21産経

バチカンの礼拝堂壁画を立体復元した「システィーナ・ホール」で上演された新作歌舞伎=徳島県鳴門市

 徳島県鳴門市の大塚国際美術館は、バチカンのシスティーナ礼拝堂天井画と正面祭壇壁画を再現した「システィーナ・ホール」を舞台に、“システィーナ歌舞伎”と銘打って新作歌舞伎「切志丹寺(きりしたんでら)異聞 伽羅沙(ガラシャ)」を上演した。2日間の公演で延べ約1500人が見物に訪れ、西洋美術の「洋」と伝統的な歌舞伎の「和」のコラボレーション舞台を満喫した。

 公演は松竹の制作で、同舞台が初演。梅若六郎氏の新作能「伽羅沙」をモチーフに、荘厳な雰囲気を持つ「システィーナ・ホール」の空間に合わせて歌舞伎舞台化した。悲運の細川ガラシャ役は実力派女形の上村吉弥さん、ガラシャの夫・細川忠興役は若手花形の坂東薪車さんが演じた。

 巨匠ミケランジェロの祭壇壁画を背景にした同ホールの舞台は、長唄や囃子(はやし)、琴などの邦楽と、オルガンや聖歌隊による西洋の教会音楽が見事に融合し、観客らは厳粛なムードの中で繰り広げられる伝統芸能に酔いしれた。

 荘厳な礼拝堂の雰囲気を効果的に使う構成は、同美術館ならではの企画で、県内外から訪れた歌舞伎ファンや美術ファンを大いに魅了していた。

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Crossroads:乱歩歌舞伎「人間豹」 続編の「京乱噂鉤爪」来月上演


 ◇幸四郎と染五郎が主演「面白い部分取り入れて創作」
 松本幸四郎と市川染五郎の主演で昨年11月に東京・国立劇場で上演された「江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)-明智小五郎と人間豹(ひょう)」は、江戸川乱歩作品の初歌舞伎化として話題を集めた。その続編「京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)-人間豹の最期」(岩豪友樹子脚本、九代琴松演出)が10月に同劇場で上演される。【小玉祥子】

 前作では原作の「人間豹」の設定を昭和から江戸に移し、明智小五郎は探偵から町奉行所同心に置き換えられた。人間豹と呼ばれる怪人、恩田乱学(染五郎)が次々と女性を殺害。最後に明智(幸四郎)に追いつめられ、大空へ姿を消す。

 続編はすべて新たに創作。幕末の京に恩田が現れ、明智は探索のため京へ向かう。明智と恩田は再び闘うが、陰に天下の転覆をはかる陰陽師(おんみょうじ)、鏑木幻斉(中村梅玉)の姿が見え隠れする。

 岩豪は「前作をご覧になった方にも初めての方にも面白くなくてはいけない。乱歩のいろいろな作品から題材を取り入れました」と続編ならではの苦労を語る。

 映画には続編やシリーズ物が多いが、歌舞伎ではあまりない。戦前では六代目尾上菊五郎が木下藤吉郎を演じた「太閤記」シリーズ(1940年)など。近くは市川猿之助によるスーパー歌舞伎「新・三国志」3部作(99年から)や幸四郎の「夢の仲蔵」シリーズ(2000年から)が挙げられる。

 ところが、染五郎は現在もシリーズ物に主演している。東京・歌舞伎座の昼の部で上演中の「竜馬がゆく 坂本竜馬最後の一日」(司馬遼太郎作、齋藤雅文脚本・演出、26日まで)だ。07年9月の同劇場の「竜馬がゆく 立志篇(へん)」を皮切りに、08年9月に同劇場で「風雲篇」が上演され、「最後の一日」で3部作が完結する。演じる役はもちろん竜馬。

 「『立志篇』は、まだ何もなしていない竜馬をどう面白く見せるか。『風雲篇』の竜馬は既にいろいろなことをしている。それをどう整理するか。『最後の日』は竜馬の死までをどう見せるか。それぞれに難しさがあります」と話す。

 「人間豹」の歌舞伎化を提案し、今回の原案を考えたのも染五郎だ。「前作で面白かった部分は、今回も取り入れるようにしました。いいものには普遍性がある。それを探し出すのが、連作の難しさかもしれません」

 宙乗りや炎の場面、鏑木の妖術など、視覚的なおもしろさも味わえそうだ。梅玉も「あいつさえいなければと思っていただけるように憎々しく演じたい」と張り切る。

 幸四郎は九代琴松として演出にもあたる。「新作歌舞伎では珍しい第2弾ができた。『仲蔵』からの積み重ねが乱歩歌舞伎に結びついたと思います」。10月4日から27日まで。問い合わせは0570・07・9900へ。【小玉祥子】

おくりびと:舞台化!勘太郎、麗奈演じる

 第81回米アカデミー賞外国語映画賞ほか国内外の映画祭で89冠に輝いた映画「おくりびと」が、来年5月に舞台化されることになった。6日、東京の新宿ピカデリーで行われたロングラン1周年記念舞台あいさつで発表された。本木雅弘(43)が演じた主人公の納棺師には歌舞伎俳優の中村勘太郎(27)。広末涼子(29)が演じた納棺師の妻には田中麗奈(29)が決定した。

 世界中を涙の渦に巻き込んだ名作映画が、今度は舞台となって新たな感動を生み出す。

 昨年9月13日の公開から間もなく1年、主演の本木、滝田洋二郎監督(53)、脚本の小山薫堂氏(45)が新宿ピカデリーに集合。同劇場と撮影地、山形県内の「ムービーオンやまがた」の2館で続いている異例のロングランを観客に感謝した。

 この日はサプライズが用意されていた。映画のエグゼクティブプロデューサーの間瀬泰宏氏が「舞台化が決定しました!」と発表。約300人の観客からは一斉に「ワーッ」と歓声。間瀬氏は「英題“Departures(出発)”の通り、“おくりびと”の新しい旅立ちです」と話した。

 新人納棺師が先輩納棺師や遺族と接することで人間的に成長していく、という基本軸は同じだが、映画では描かれていないエピソードも盛り込まれる予定。滝田監督が演出協力、小山氏が脚本協力で加入。原作に感動し映画化を企画、生みの親的な存在の本木がどのようにかかわるかは未定だが「枝葉が伸びていくのは素晴らしい。どんな世界ができるか、観客として楽しみです」と期待を寄せた。

 勘太郎は「僕が本木さんの役とは…。プレッシャーで押しつぶされそうです。でも映画の熱い魂を引き継いでいきたい」と文書でコメント。幼少時から歌舞伎の所作を叩き込まれており、納棺師の様式美を舞台で表現するにはもってこいの配役。田中も「日本の伝統が織り込まれた美しい作品に参加できて光栄」と、出演決定に喜んでいる。

 近日中に製作発表会見が行われる予定。公演は、来年5月28日に東京の赤坂ACTシアターで開幕。同6月には大阪、名古屋でも上演される。(スポニチ)

「芝居の子」山田庄一さん

2009年9月7日 asahi関西

山田庄一が演出した「天変斯止嵐后晴」(国立文楽劇場提供)
 古くからの友人である演出家の山田庄一さんが手がけた文楽「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)」が7月から8月上旬にかけて大阪・国立文楽劇場で上演されました。シェークスピアの「テンペスト」を日本に置き換えた作品なんやそうですな。公演が始まる前に、山田さんに話を聞かせてもらいました。

 「演出するのは難しかった。日本とは思想が違っているから。一番困ったのは『妖精』、日本では置き換えるものが見つからなかった。『魔法』もそうでした」

 そもそもテンペストがイギリスで初演されたのは、400年ほど昔のことらしい。筋を説明するのも大変なとても入り組んだストーリーやそうな。山田さんは「一種の復讐(ふくしゅう)物語」と言うてたが、「日本の敵討ちとは違って、最後はすべて許します」。事情が違うことばかりやろうし、ほんまに大労作やったことでしょうな。

 山田さんは私と同じ大正14(1925)年に大阪・船場に生まれました。文楽や歌舞伎の復活上演も手がけてこられたんです。私もいろんな落語の噺(はなし)を復活させてきましたが、皆がやらんようになる噺というのは、ウケませんねん。難しかったり、長すぎたり……。そういえば、そんな噺ばかりをやる落語会を、山田さんに世話人になってもらって、昭和35(1960)年から京都で始めたんです。

 会場は観世会館。「算段の平兵衛」や「三年酒」などはそこで復活させました。「謡大根(うたいだいこん)」や「常太夫義太夫(つねだゆうぎだゆう)」てな珍しい噺を、いまだに山田さんが覚えてくれてたのには感心しましたな。とにかくみんなでよう酒を飲みました。それが一番の思い出ですな。

 山田さんは「天変斯止嵐后晴」の記者会見で、「何か参考にした作品はありましたか」と聞かれて、「ありません。自分の頭の中から勝手に出てきたんです」と答えたそうや。芝居好きの家で生まれて、子守歌のように文楽や歌舞伎を聞いて大きくなったんですからな。育ち方が違います。新作でずっと残っていくものを作るのはどの世界でも大変やろうが、まだまだ彼はがんばっていかれることと思います。

       ◇

歌舞伎:ミケランジェロの世界と融合 大塚国際美術館システィーナ・ホールで /徳島


 ◇聖歌隊にオルガンの音色
 バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井画や壁画を、原寸大に陶板で再現した大塚国際美術館(鳴門市鳴門町土佐泊浦)システィーナ・ホールで5日、初めて歌舞伎が上演された。厳かな西洋の雰囲気の中で演じられた日本の伝統美に、約500人の観客が見入った。

 演目は新作「切支丹寺異聞 伽羅沙(がらしゃ)」。戦国時代、キリスト教への信仰に殉じた細川ガラシャを実力派の女形(おやま)・上村吉弥さんが、夫の細川忠興を若手の坂東薪車さんが好演した。鳴門教育大の学生による聖歌隊が出演する場面ではオルガンの音色が流れ、教会のミサのような雰囲気に。ミケランジェロの宗教画「最後の審判」を背にガラシャの生涯が見事に浮かび上がった。

 徳島市上八万町の主婦、新居美代子さん(62)は「空間と物語の一体感がすごい」と感激。友人の谷悦子さん(61)も「感動した。歌舞伎の印象が変わった」と話していた。

 6日も上演する。問い合わせは同美術館(088・687・3737)。【井上卓也】

「礼拝堂」ホールで歌舞伎上演=和と洋の融合演出-徳島


 バチカンのシスティーナ礼拝堂内部を原寸大で再現したホールを舞台に、歌舞伎を披露する「システィーナ歌舞伎」が5日、徳島県鳴門市の大塚国際美術館で上演された。壁にはミケランジェロのフレスコ画「最後の審判」もそっくり複製されており、集まった500人の観客は、和と洋が織り成す幻想的な空間に酔いしれた。
 上演された歌舞伎は能を基に、演出家水口一夫さんが脚色した「切支丹寺異聞 伽羅紗」。日本伝統の長唄や琴のほか、教会音楽なども取り入れた。本当の礼拝堂のような厳粛な雰囲気を美術館ホールに醸し出した演出で、戦国武将・細川忠興の妻でキリスト教徒のガラシャの悲運な生涯が繰り広げられた。(2009/09/05-20:26 時事通信)

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<幕の内外>時間と戦う衣装方 すべては役者のために

2009年9月5日


 芝居の衣装を管理・製作する衣装方。裏方の仕事ですが、その実態は実にスリリング。

 歌舞伎の衣装は「フルオーダー」が基本。幕ごとに作られた「付帳(つけちょう)」という設計図(大道具小道具・かつらも同様)をもとに、役者個人の体格や好みを考慮し、ひとつひとつ手作りしますが、常に時間との戦いです。

 仮チラシで演目が発表されるのが約二カ月前とすると、この時点では出演俳優だけが決まっていて、誰がどの役を演じるかは、まだわからない場合も。

 衣装方は、経験で配役を予想し、時には見切り発車で製作にかかります。ちなみに合言葉は「実はの時は気をつけよう」。芝居では「どこそこの主人なに平、実は平家の公達だれそれ」のように、高貴な人が庶民に身をやつしている場合があり、衣装も倍必要になるからです。

 役者本人と打ち合わせをしてから、全体像が決まります。途中で再確認をしますが、彼らも忙しい身。効率良く進めなければ、初日に間に合いません。通常はそれぞれ担当する役者が決まっており、普段から楽屋で「少しやせたな」とか「太ったな」などと、さりげなく状態を観察し、臨機応変にサイズを補正できるようにしています。

 何が似合うかは役者本人が一番よく知っているもの。模様の位置から、生地の固さまで好みがあり、袖だけが固いのが好きな人も。照明で色も変わるため、打ち合わせ時の染め見本ではわかりにくい場合もあり、事前に見せ方を工夫するのも技術です。

 すべては役者に気持ち良く演じてもらうため。総合的な判断力が必要な職人芸と言えます。 (イラストレーター・辻和子)

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名古屋城に初の芝居小屋 勘三郎が『法界坊』 26日まで「平成中村座」

2009年9月5日東京

 中村勘三郎率いる「平成中村座」が二十六日まで、名古屋に初めて芝居小屋を特設して公演している。

 名古屋城・二之丸広場に江戸情緒をよみがえらせた約八百四十席の専用劇場を建て、昼は「法界坊」、夜は「極付(きわめつき) 幡随長兵衛(ばんずいちょうべえ)」などを演じる。

 大団円で舞台背面が開くと、城の石垣や隅やぐらの一部、木々が目に飛び込む造り。二〇〇〇年の東京以来、国内外を巡演してきた平成中村座だが、「今までの中でも良いロケーション。こういう所でやらせていただくことは、なかなかない。この先もあるかないか」と勘三郎。「江戸時代だったら考えられない。芝居者がお城の中でやることなんて許されない。『法界坊』なんてやった日には捕まってしまいます」

 名古屋は江戸時代の初代勘三郎の出身地説がある地で、平成中村座の初お目見えは三年前。ただ、その際は市内の高校体育館を改装した四日間の短期公演だったが、今回は東海テレビが開局五十周年の目玉事業と位置付け、名古屋市も共催して城内で初の本格的な歌舞伎を試みることになった。

 共演は中村扇雀、中村橋之助、坂東彌十郎、中村勘太郎・七之助ら。

 3万6千~1万1千円。(電)052・937・5400(名古屋平成中村座事務局)。 (三田村泰和)

<歌舞伎>和風桃山様式維持、“愛着派”へ配慮 バリアフリー化推進 防災・エコ面での充実も

2009年9月5日

 松竹と歌舞伎座が東京・銀座の現在地に建て替え計画を発表した新歌舞伎座。外観などは極力踏襲する一方、内部の使い勝手となると、現状は女性トイレの不足や狭い客席、お年寄りにつらい階段の上り下りなど、伝統建築ゆえの欠陥も多い。さらに大地震への備えや、地球温暖化対策なども急務。何が変わらず、何が変わるのか、まとめた。 (藤 英樹)

■外観
 「今のままの形で補修するという案も含めて検討した」。松竹の大谷信義会長は発表会見で、まずこう語った。しかし続けて「最新の調査で、老朽化に加え、戦争で焼け残った具材などが使われており、新たに建て替えるしかないとの結論に達した」。

 歌舞伎座は一八八九(明治22)年に現在地に建設された。当時の外観は洋風、内部は和風造りだった。その後一九一一年に純和風に大改造、しかし二一年に焼失した。二四年に再建されたが、四五年の空襲で八割が破壊された。基礎などを残して五〇年に改修され、現在に至る。

 松竹によると「役者さんから、音響や舞台景観の良さなど高い評価を得ており、外観も壊さないでほしいとの声もあった」という。それだけに「建て替え後の外観も和風桃山様式で歌舞伎座は変わらない。瓦屋根や欄干など今の具材もできる限り再利用する」と“愛着派”に配慮する。

■内部
 大谷会長は会見で(1)バリアフリー化(2)耐震性能の向上(3)トイレの充実-を強調した。具体的にはエレベーターやエスカレーターの新設、女性トイレの増設など。現在の歌舞伎座では二、三階席までお年寄りが大変な思いで階段を上がり、幕間(まくあい)にトイレで長蛇の列をつくる女性からの不満も少なくない。地下鉄東銀座駅で地下に着いても狭くて急な階段を上らなければならず、これも改善する。

 一方、客席数は現在の千八百五十九席と同程度としている。低料金で一演目だけ見られ、学生や外国人に人気が高い一幕見席(四階)も残す。

■環境
 計画では、晴海通りから建物を三十五メートル後退させて歩道を広げ、入り口には街路樹などを植える。これにより、新歌舞伎座を訪れた客は緑に触れ、ゆったりとした気分で歌舞伎を見る心の準備ができるという。

 また、併設するビルと併せて「屋上庭園」整備や「太陽光発電・自然換気」などの利用で二酸化炭素(CO2)排出削減や防災性能の向上に取り組む。

 さらに、歌舞伎文化を啓発するギャラリーや、役者によるワークショップなどが行われる「(仮称)歌舞伎アカデミー」なども併設するとしており、松竹は「歌舞伎のすそ野を広げたい」と意欲を示す。

■公演
 気になるのは、新歌舞伎座完成までの公演がどうなるかという点。松竹は「代替劇場として新橋演舞場で年間十~十一カ月歌舞伎を上演する。明治座などほかの劇場や地方からの上演要望も多いので、全体の公演数は減らない」と言う。

 日本俳優協会会長の中村芝翫(人間国宝)は「新しい歌舞伎座が立派な建物になるものと期待して、その日を心待ちに毎日の舞台を勤めたい」とコメントした。ファンや役者の期待を集める新歌舞伎座が誕生するのは二〇一三年春の予定だ。

 <新歌舞伎座> 計画では、地下1階地上4階建ての新歌舞伎座は、後方の高層オフィスビル(地下4階地上29階建て・高さ135メートル)とともに来年5月に着工。延べ床面積9万3900平方メートル。総事業費は約430億円で、うち劇場部分は約180億円。

中村勘三郎、先祖ゆかりの名古屋公演で幸せ感じる

名古屋城の城壁をバックに「法界坊」で熱演する中村勘三郎(左)と中村橋之助

 歌舞伎俳優・中村勘三郎(54)が率いる「名古屋平成中村座」公演の舞台げいこが3日、公開された。

 名古屋開府400年祭プレイベントとして名古屋城二の丸広場に芝居小屋を建てた。中村屋の先祖は名古屋の中村地区出身ということもあり勘三郎は「このような縁のある所で、しかも名古屋城の中でやらせていただける幸せを感じながら毎日務めさせていただきます」と感激。平成中村座は東京、大阪をはじめ、ニューヨーク、ベルリンでも公演を成功させており、満を持しての名古屋公演。昼の部「法界坊」、夜の部「元禄花見踊」では舞台の奥が開き、城の石垣をバックに俳優の熱演が見られる。公演は4~26日。

スポーツ報知

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勘三郎さんが迫力舞台 「平成中村座」4日から上演

2009年9月3日東京新聞:愛知

外観がほぼ完成した「名古屋平成中村座」=名古屋市中区で


 人気役者、中村勘三郎さん(54)が名古屋に3週間余り乗り込んで歌舞伎を上演する「名古屋平成中村座」(東海テレビ放送、中日新聞社など主催)が4日、開幕する。約830席の特設会場が名古屋市中区の名古屋城・二之丸広場にほぼ完成し、役者の名を記したのぼり旗が雰囲気を盛り上げている。

 江戸情緒を伝える芝居小屋を期間限定でこしらえ、勘三郎さんが芝居を繰り広げる人気企画。2000年の東京に始まり大阪、米国などで評判を呼んできた。名古屋では06年に中村区の同朋高校体育館を改装して4日間興行した例があるが、今回は趣向新たに鉄筋造りの縦45メートル、横23メートル、高さ11メートルの小屋を建てた本格仕様の公演となる。

 公演は26日まで昼夜42回。3万6000~1万1000円。残席わずか。問い合わせは、名古屋平成中村座事務局=電052(937)5400=へ。

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【上海摩天楼】万博で史上最大の集客作戦 玉三郎さんの「昆劇」上演も

2009.9.3 15:55産経

日本の歌舞伎界を代表する女形、坂東玉三郎さんが今年3月、中国伝統劇「昆劇」を江蘇省蘇州市で演じた際のパンフレット。来年の上海万博でも上演する方向で調整している 中国上海市で2010年に開かれる「上海万博」の開幕まで240日を切った。金融危機のあおりで最後まで資金不足に悩んだ「米国館」も含め、240以上の国や国際機関など、ほとんどのパビリオンが着工し、会場内の槌音もいよいよ高まってきた。日本の政府と企業が共同でプロジェクト総額130億円を投じる「日本館」も建設工事が急ピッチで進んでいる。

 上海万博では来年5月1日から10月31日まで184日間に及ぶ期間中に、延べ7000万人の入場者が見込まれている。万博事務局イベント部の金濤氏は「パビリオンなど常設展示に加え、タイミングをとらえた多彩なイベント開催が入場者の誘致でも重要な役割を占める」と話す。万博会場内には30以上のイベントスペースがあり、各スペースで1日3回、期間中に2万回近いイベントが繰り広げられる計画だという。

 イベントは開幕式典など主催者側が行うものと、舞台演出など出展者側が行うものとに分けられる。05年の愛知万博では合わせて約1万1000回のイベントが行われ、入場者の50%にあたる1090万人が鑑賞した。史上最大規模をめざす上海万博では1日あたり20万人、期間中に3500万人以上が鑑賞すると、事務局はみている。

 出展者側が開催するイベントは事務局による事前の内容審査が必要だ。8月下旬までに寄せられた約700のイベント案のうち、3分の1を超える約240件が日本関係だった。金氏は「過去5回の万博経験がある日本は実に経験が豊富だ」と舌を巻く。日本関連の特別行事が行われる「ジャパン・デー」は6月12日で、その後1週間を「ジャパン・ウイーク」と銘打つ。

 その「目玉」となりそうなのが歌舞伎界を代表する女形、坂東玉三郎さんによる中国の伝統劇「昆劇」の上演だ。日本政府関係者によると「ジャパン・デー」前後に、会場内の演芸センターで上演する方向で調整が進んでいる。板東玉三郎さんは、昆劇の代表的演目「牡丹亭」を昨年3月に京都、同5月に北京、今年3月に昆劇のふるさと江蘇省蘇州市で上演し、いずれも好評だった。11月には上海でも上演する予定で、万博への参加にも意欲をみせている。


 また、「日本館」では日中の著名な演出家2人の手によるミュージカルを毎日上演する計画だ。日中をつなぐ象徴として語られる国際保護鳥「トキ」の復活がテーマで、人々の「心のつながり」を訴える。演出に起用されたのは「座・高円寺」の芸術監督の佐藤信さんと、上海出身で香港を中心に活躍しているダニー・ユン(栄念曽)さん。2人は沖縄で舞台を共同制作したこともある間柄だ。

 ミュージカルは「日本館」の第3展示ゾーンで1日35回上演する予定。全員オーディションで選ぶ中国人が出演する。国の特別天然記念物でもあるトキは03年に日本産野生種が絶滅。新潟県佐渡市で、中国から贈られたつがいの人工繁殖に成功し、そのうち10羽が昨年9月に野生を復帰めざし放鳥されるなど、日中の関係を物語る存在としてクローズアップされている。

 GDP(国内総生産)の規模で年内にも日本を追い抜き、世界2位になることが確実視される中国。入場者7000万人の95%と見積もられる中国人に文化交流を通じ、いかに「日本と日本人」を正しく理解してもらうか。時として反日感情をむきだしにする中国との「大人の関係」を築く契機にしたいと日本政府関係者は考えている。イベントも“お祭り”の枠を超えた使命をもっているようだ。(上海 河崎真澄)

市川團十郎、モナコでの歌舞伎公演を発表


2009.9.1 05:00
松竹大歌舞伎のモナコ公演実施を発表した(左から)市川海老蔵、市川團十郎、中村時蔵【フォト】 歌舞伎俳優の市川團十郎(63)が31日、長男の市川海老蔵(31)と都内で会見し、9月16~19日にモナコ・モンテカルロ歌劇場で歌舞伎公演を行うことを発表。「海外で日本の歌舞伎をアピールできれば幸せ」と意気込みをみせる一方、「カジノに行ってみたい。モナコの財政も潤うので、少しは楽しめれば」。海老蔵は「意外と僕はストイック。夜に散歩してみようかな」。

中村吉右衛門が「時今也桔梗旗揚」初代の得意演目…「芸の大きさ伝える」

2009.9.1 08:21 産経

「時今也桔梗旗揚」の武智光秀を演じる中村吉右衛門 歌舞伎の中村吉右衛門が2日から、東京・東銀座の歌舞伎座で「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)」「勧進帳」などに出演する。例年9月は「秀山祭」として、秀山の俳名をもつ初代吉右衛門ゆかりの演目を取り上げている。今年は「歌舞伎座さよなら公演」のために「秀山祭」の名はつかないが、初代が得意とした演目がそろった。

 「時今也桔梗旗揚」は、明智光秀と織田信長の確執に焦点を当てた四世鶴屋南北の名作。光秀は武智光秀、信長は小田春永と名を変え、2人をめぐるさまざまな人間模様が描かれる。吉右衛門は光秀を演じる。

 「光秀が武士の面目を保つため、自然に謀反に向かっていくように見せなければいけない。今の世の中でも、会社の上司と部下でそういうことが起きるかもしれない。この作品は、せりふだけでそこへ持っていくよう、実父(松本白鸚(はくおう))に熱意をもって教えられました」

 勅使饗応(きょうおう)の接待役となった光秀は、春永の機嫌をそこねて蟄居(ちっきょ)を命じられる。続く本能寺では、春永が馬盥(ばだらい)で酒を飲ませるなど、光秀にさまざまな屈辱を与える。大詰の愛宕山の宿所では、妻の皐月(さつき)や家臣らとともに歌を詠み、春永を討つために本能寺へ出発する。忠実な家来だった光秀が春永の暴虐に耐えかねて意を決するまでの内面表現の妙が楽しめる演目だ。

 「地味で動きもないが、初代の芸の力がお客さまを乗せていった。その芸の大きさを何とか伝えたい」。平成12年以来、9年ぶりの役で、中村富十郎、中村魁春、中村錦之助らとの共演となる。

 また「勧進帳」では富樫左衛門役で、兄、松本幸四郎の武蔵坊弁慶、おい、市川染五郎の源義経と共演する。父方の祖父に当たる七代目松本幸四郎没後60年にちなむ上演で、初代吉右衛門ばかりでなく、二代目尾上松緑、十一代目市川團十郎、十七代目中村勘三郎、十四代目守田勘弥ら、かつての名優の演技のいいところを取り入れて、役を作っていくという。

 26日まで。TEL03・5565・6000。(生田誠)

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歌舞伎:団十郎 さっそく民主党に“注文”

 歌舞伎のモナコ公演が行われることになり、出演者の市川団十郎(63)、市川海老蔵(31)、中村時蔵(54)が31日、都内で会見した。

 「春興鏡獅子」「鳴神」の2演目。団十郎は衆院選の結果を踏まえて「日本の歴史が激変する中での会見になりました」とあいさつ。62回目となる歌舞伎海外公演は文化庁が後援。小泉純一郎元首相は大の歌舞伎好きで知られただけに「ヨーロッパは文化が経済を主導していくという文化。日本もそのようになればいいですね。次の方にも歌舞伎の支援をお願いしたい」と梨園を代表し、さっそく民主党に注文を付けた。今月16日から4日間、モンテカルロ歌劇場で。(スポニチ)

歌舞伎:吉右衛門が歌舞伎座で昼夜の4役 光秀、幡随院長兵衛、富樫、紅屋長兵衛

 ◇9月恒例「秀山祭」の思い引き継ぎ
 中村吉右衛門が9月の歌舞伎座で昼夜の4演目に出演する。昨年まで3年間、9月には初代吉右衛門(秀山)の芸を顕彰する「秀山祭」が吉右衛門を中心にして行われていた。今年は「さよなら公演」期間中のため「秀山祭」と銘打たないが、吉右衛門は「演目選定には思いを引き継いでいただけた」と語る。【小玉祥子】

 昼が鶴屋南北作「時今也(ときはいま)桔梗旗揚(ききょうのはたあげ)」の武智光秀(明智光秀)。光秀が謀反を決意するまでの「饗応(きょうおう)」「馬盥(ばだらい)」「連歌」の上演。「秀山を偲(しの)ぶ所縁の狂言」の副題が付くように、初代が光秀をあたり役とした。

 光秀は小田春永(織田信長)の命令で、額を割られ、馬が足を洗うたらいで酒を飲まされ、困窮した際に妻が売って金に換えた切り髪を見せられる。度重なる恥辱に、ついに堪忍袋の緒を切る。

 吉右衛門は「この立場に置かれれば、誰でも謀反を起こすのでは。気持ちの流れが自然で好きな人物です。お客様に早く『謀反をやっちゃえ』と声援していただけるように努力します」。

 夜の部は最初が「鈴ケ森」の幡随院長兵衛。襲いかかる雲助を次々と切り倒した白井権八(中村梅玉)を、長兵衛が呼び止める。「人を切るのですから本当は残忍ですが、そこを面白くしてしまう。歌舞伎ならではの雰囲気を味わっていただける芝居です」

 次が「勧進帳」の富樫。「七代目松本幸四郎没後六十年」の副題が付き、七代目の孫である幸四郎(吉右衛門の実兄)の弁慶、ひ孫の市川染五郎の義経だ。「富樫は途中で義経主従の正体に気付きますが、自分が腹を切る覚悟で見逃してやる。そういう気持ちでいたします」

 最後は「松竹梅湯島掛額」の紅屋長兵衛。こちらも初代のあたり役だ。木曽軍が攻めてくるので、人々は吉祥院へ避難している。そこに来た長兵衛は、体にかけるとぐにゃぐにゃになる不思議な「お土砂」を委細構わずにかけまわる。「肩の力を抜いて見ていただける喜劇です」

 9月2日から26日まで。問い合わせは03・5565・6000へ。

尾上菊之助が“天皇”に!でもタジタジ…

2009.8.31 05:02
NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」で明治天皇を演じる尾上菊之助(中央着席)と共演の左から加藤剛、竹中直人、米倉斉加年、江守徹、石坂浩二、高橋英樹【フォト】 歌舞伎俳優の尾上菊之助(32)がNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」(11月29日スタート、日曜後8・0)で明治天皇を演じることになり30日、東京・渋谷区の同局で会見した。

 日露開戦目前の御前会議のシーンで玉座についた菊之助だが、同時発表の新キャスト、江守徹(65)、米倉斉加年(75)や既出の加藤剛(71)、石坂浩二(68)ら演劇界の重鎮に囲まれ、「皆さんは天皇陛下の家臣なわけですが、ここに座っていると異様なプレッシャーを感じます」と苦笑いした。


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【都の西北 早稲田大学、127年目の飛翔】演劇博物館 華やかで深い文化遺産

2009/8/29

 早稲田大学キャンパスにひっそりとたたずむ洋館。日本唯一の演劇専門博物館である「坪内博士記念演劇博物館」だ。そこに所蔵される演劇資料は錦絵4万6000枚、舞台写真20万枚、図書15万冊、その他衣装や人形などの資料5万2000点。そのコレクションの数々は日本の誇る文化遺産ともいえる。

 演劇博物館は、1928(昭和3)年10月、坪内逍遙博士が70歳に達し「古希」を迎えたことと、情熱を傾けていた「シェークスピヤ全集」全40巻の翻訳が完成したのを記念して、設立された。演劇博物館入り口にかかれているラテン語は「全世界は劇場なり」との意味で、演劇芸術の発展に尽くした坪内博士の熱い思いを感じ取ることができる。

 風格ある建物は坪内博士の発案で、16世紀英国・ロンドンの劇場「フォーチュン座」を模して設計された。正面張り出しを舞台とし、楽屋、舞台を囲むようにある両翼は桟敷席で、建物前の広場は一般席と位置づけるなど建物そのものが、演劇の歴史を物語っている。実際にシェークスピアの舞台も何度も上演されている。




演劇博物館の坪内逍遙像

 シェークスピアの戯曲の数々やその歴史背景をたどるコーナーのほか、「仮名手本忠臣蔵」「四谷怪談」など歌舞伎浮世絵も所蔵。その多くは、デジタル画像によって閲覧が可能だ。能面体験コーナーもあり能面を着用できるなど楽しみながら学ぶことができるのも同博物館の特徴だ。芝居小屋の大道具や当時の飲食産業や流行の髪形、舞台衣装、楽器や道具などありとあらゆるものが展示されている。古代(散楽、舞楽)から中世(能)、近世(歌舞伎や浄瑠璃)、近代(新劇、ミュージカル)、現代(小劇場演劇)までの資料がおかれ、眺めているだけで歴史の流れを体感できる。

 同博物館で最も注目されるのが歌舞伎役者などを描いた「錦絵」だ。坪内博士は晩年、錦絵の収集、整理に注力し、このコレクションが博物館設立を決意させたといわれる。この膨大なコレクションの情報発信としてインターネット上での公開やデータベースの構築を図っている。映画雑誌のコレクションや舞台写真の数々などは閲覧室や写真管理室で見ることができる。

 華やかに彩られた演劇の世界。その歴史を知れば、劇場での鑑賞とは違った演劇の新たな魅力に染まるに違いない。

<幕の内外>着物の色 見せ方でキャラもわかる

2009年8月29日


 衣装にはいろいろなサインがあります。色や模様はもちろん、その見せ方によって、職業からキャラまでわかります。

 たとえばヤクザとお坊ちゃま。この正反対の役柄の、衣装の共通のツボは水色。でも見せ方に大きな違いがあります。ヤクザは着物の裏側に、お坊ちゃまは表側に使うのが決まり。

 「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」角力場に登場する与五郎は、肩をポンとたたくと、前にヨロヨロとよろめくような優男。こういう役を「つっころばし」と呼び、三枚目風で柔らかみのある「和事」の演技に特徴があります。

 ひいきにする関取・濡髪の取組結果に一喜一憂し、お世辞で濡髪をほめる人に、次々と自分の持ち物をあげてしまう「バカ坊ちゃま」ですが、このつっころばし、水浅葱(みずあさぎ)色とよばれる水色の羽織が特徴。なで肩できゃしゃなので、羽織が今にも肩からずり落ちそう。よく見れば羽織紐(ひも)も薄い水浅葱で、ノホホンとした雰囲気に良く似合います。衣紋も女性のように抜いて、ナヨナヨ感を強調。

 対してヤクザでは、水色は着物の裏地に使われます。千草色という、水浅葱より少し鮮やかな青色で、着物の着方もゾロリとした質感の与五郎とは違う。ケンカで「この野郎!」と裾(すそ)をパッとめくった時、この千草色が派手に見えていいわけです。

 一般の町人男性の場合は、裏地は縹(はなだ)色という紺色が決まり。カタギかどうかは、裏地の色でもわかりますが、実際の江戸時代ではヤクザが縹色、一般町人が千草色で、芝居とは正反対。あくまでも「舞台の上でのリアルさ」を追求した結果です。 (イラストレーター・辻和子)

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われ日本の伝統芸能を愛す。そのため記事をここに書きとめ候。参考にされるならば、またうれし。ともに伝統芸能にはまろうではないか。
なんちゃってね。
あれ、どこで読んだんだっけなと探すことが多いので、ここにたんたんと書き留めることにしました。最新あり、遅いのもあり。鷹揚のご見物を♪


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